あるケースを紹介する。
「未完の物語」が終わると人はどのように変わっていくのか。「人は変えられないが自分は変えることができる」ことの一例である。
ケース K女史のプロフィールと行き詰まり①
K女史は、現在53歳である。いまも10年前と同様に教師を続けており子供たちもそれぞれ元気に成長している。行き詰まり当時は、年齢43歳の高校の英語教師であった。結婚しており、3名の小学生の子供がいた。きまじめで内向的な性格であり、団塊の世代に属していた。彼女のそれまでの人生は戦後のベビーブームに始まる過激な競争の連続であった。受験戦争といわれた時代を懸命に乗り切り、紆余曲折を経て教師となり結婚して家庭も持った。そして、彼女なりにまじめに一生懸命に生きてきたのであるが、中年期を迎えて「鬱状態(depression)」で苦しむこととなった。
この苦しみのなかで彼女は、教師としてそれまでに受けた国内外におけるさまざまなトレーニングや研修、精神医学や心理学、カウンセリング関連の諸知識によりその解決を図ろうと、いつもの懸命さで回復の努力を続けた。しかし、彼女の胸に重くのしかかるようないやな感覚は膨らんでいくばかりであり、エネルギーレベルも低く、何をするに身体的・精神的に苦痛を感じていた。それでも、いつもの生活をいつものように暮らすことに懸命であった。教師としての仕事も明るくさわやかに続けなくてはならないと頑張り続けていた。(つづく)