2015年4月17日金曜日

ケース 回復への手がかり④


   さて、彼女が取り組みの目をまず向けたことは、彼女自身の父親と母親のことであった。「どのような人か、またどのような出来事がありどのような思いをもっているか」といったことを、父親と母親それぞれについて書き出した。そして、書き出したものを援助者とグループの仲間の前でそのまま読み上げ、フィードバックをもらう数回の機会を得た。「己を知る」具体的な取り組みの始まりである。


 その作業(セッション)を終えたとき、彼女をあれほどまでに苦しめ続けていた「不安」がなぜかその姿を消していた。また、同時にクリスチャンとしての信仰に目を向けるきっかけも得ていた。それは、「自分は何かに支えられている」との実感を伴う体験に恵まれたからであった。


 このことが起きたのは、取り組みを始めてからほんの数日間後のことであった。奇跡が起きたことのように思えるこの出来事は、彼女の中で正真正銘の変えようのない「事実」なのである。そして、その後「不安」の翳りのようなものを感じることが時々はあったものの、その翳りの正体を知っていくことを通して、その「事実」の意味がさらに明らかなものとなっていくのである。(つづく)