さて、不安とストレスの中で心身を消耗し続ける中で、元気さを装うことにも疲れ始めた頃、回復に向けての転機が訪れることになる。言葉通り、日ごとに身動きできなくなって行くのであるが、その時に神が彼女に差し伸べた手は、ある一人の回復中のアルコホーリク(アルコール依存症者)を通してであった。
その行き詰まりに陥る数年前にたまたま知りあって友達となったその人物の導きで、彼女は自分自身に目を向ける取り組みをする機会を得ることとなったのである。それまでの知識やスキルに助けを求めることに疲れ果てており、その先に希望が見いだせないことを感じ取っていたこともあるが、外側ではなく内側に目を向けていくことの新鮮さに心を引かれていた。
彼女には、新しいものには心を引かれるという傾向がある。それは、そのなかに人との競争に打ち勝っていく「力(power)」を感じ取るからなのである。このように、彼女にさし伸ばされた手を握る勇気はあったものの、その時点での動機としてはさまざまな欲(自分のニーズ)がみられる。しかし、ともかくこのことが、彼女のその後の回復と成長の大きな足がかりとなっていくのである。(つづく)